ガラスの美神たちと、静謐の中で戯れる
箱根ラリック美術館
神奈川県/箱根
心が、知らない間にひび割れて、空っぽになっているときがある。そんなとき、やわらかな水が肌に添うように、すっと心に入って潤してくれる美しいもの。ラリックの作品群もそうした美のひとつに挙げられるでしょう。
ジュエリーや香水瓶をはじめとするガラス工芸で、今日でも愛される数々の意匠を残したルネ・ラリック。彼の生きたアール・ヌーヴォーとアール・デコの、二つの時代をガラス作品を通して知ることができるコレクションが、箱根ラリック美術館に収められています。
ラリックの作品は、饒舌に己を開示することもなく、解釈を求めることもなく、ただ素直に美しくそこにたたずんでいるだけ。日常から離れた静謐の中での純度の高い美との邂逅が、心に休息を与えてくれます。
ルネ・ラリック
アール・ヌーヴォー華やかなりし19世紀末のフランス。ルネ・ラリックはジュエリーデザイナーとして活躍を始め、その後、香水瓶に代表されるガラス工芸で、彼の名声と、彼の中の創造性を確固たるものにしてゆきます。
動植物や女性、神話をモチーフにした、優美で装飾的なアール・ヌーヴォーから、対象への観察眼はそのままに、幾何学的で硬質、少し無機質でもあるアール・デコへと。時代を映して変遷しながらも、ラリックの美意識は時代を超えて現代にも共鳴し、私たちの心に響きます。
香水瓶
見るだけでもどこか気分が高揚する、香水のボトルデザイン。実は、香水瓶を現在の装飾性の高いものへと変化させたのが、ルネ・ラリックその人なのです。
香水の大量生産が可能となり、多くの女性のファッションとなり始めた時代、各社が力を入れたのがボトルのデザインでした。
陶器のシンプルな容器から、ファッションアイコンとしてのガラスの香水瓶へ。そのエポック・メイキングとなった「シクラメン」をはじめ、香水メーカーがこぞって依頼したというラリックの香水瓶の世界に、当時の女性たちの熱狂が伝わってくるようです。
ガラス
優美で華やかなアール・ヌーヴォーから、力強くシャープな魅力のアール・デコへ。ラリックが彼の中の豊かな創造性の伴侶としたのが、ガラスという素材でした。ラリックはただガラスを溶かし、成型するだけではなく、鏡面加工や腐食による艶消しの手法、動物の骨灰などを混ぜて作る乳白色のオパルセントガラス……と、ガラスと光の様々な可能性を探求し、透明なガラスに表情豊かな美を描き出しました。
オリエント急行
有名な小説のタイトルにもなった、豪華列車「オリエント急行」。その名は当時の、そして今でも、人々の心をヨーロッパの旅へといざない連れてゆく、旅情を帯びた響きをしています。
その車体が日本にあります。レプリカではなく、実物が。
ラリックが車内装飾を手掛け、フランスのコート・ダジュールを駆けた後、オリエント急行としてヨーロッパ大陸を駆けた列車は、長い旅路の最後に、奇跡のように箱根にやってきました。
箱根ラリック美術館の「Le Train(ル・トラン)」では、その車体に実際に乗車し、車内でお茶を楽しみながら、その歴史や箱根に来た経緯などの説明を聞くことができます。
オリエント急行(ル・トラン)
- 料金:2,200円(ティーセット付)
- 時間:初回10:00~/最終回16:00(1時間ごと/約40分)
- 当日現地にて予約、事前予約は不可
スポット情報
- 名称
- 箱根ラリック美術館
- エリア
- 神奈川県/箱根
- 住所
- 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原186番1MAP
- 最寄り
- 箱根登山バス「仙石案内所前」すぐ
- 営業時間
- 9:00~17:00(美術館入館は16:30まで)
- 定休日
- 年中無休(展示替のため臨時休館あり)
- 入館料
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- 美術館入館料:大人 1,500円
- オリエント急行(ル・トラン):2,200円(ティーセット付)
- 備考
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- 美術館内は、所定の場所を除き撮影禁止です。
- オリエント急行「ル・トラン」は、当日現地での予約が必要です。電話予約はありません。
- 公式ホームページ
- http://www.lalique-museum.com/
お問い合わせ
最新情報は公式サイトにてご確認ください。